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<title>廻るピッツァの星　-A Story of Seven Seeds-</title>
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<description>天動説が公認されている異世界を舞台にした、オリジナル小説を綴るブログです。</description>
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<title>ありがとうございました。</title>
<description> 作者です。ようやく、当初の目的であるⅠ章まで書き終えることができました。お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。さて、マゼルとミゼルの物語は【Ⅱ：白金のスプーン】に続くのですが、あまりに行き当たりばったりでこれまで書き続けてきたので、その前によっく推敲して、全体的な手直しを行おうと思います。（絵も苦手なのですが、自分なりにしっかり描こうかな……と）当面はこれまでの直し作業が続くと思いますが
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<![CDATA[ 作者です。<br /><br />ようやく、当初の目的であるⅠ章まで書き終えることができました。<br />お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。<br /><br />さて、マゼルとミゼルの物語は【Ⅱ：白金のスプーン】に続くのですが、<br />あまりに行き当たりばったりでこれまで書き続けてきたので、<br />その前によっく推敲して、全体的な手直しを行おうと思います。<br />（絵も苦手なのですが、自分なりにしっかり描こうかな……と）<br /><br />当面はこれまでの直し作業が続くと思いますが、<br />今後ともどうか『廻るピッツアの星』をよろしくお願いいたします。<br /><br />瀧澤<br /><br /><FONT color="red">↓ランキングに参加しています。宜しければクリックをお願いします</FONT><br /><a href="http://novel.blogmura.com/novel_highfantasy/" target="_blank"><img src="http://novel.blogmura.com/img/novel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=290988" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-21.fc2.com/m/a/w/mawapizza/a_01.gif" style="border:0px;" alt="FC2 自作小説ランキングへ" ></a><br /> ]]>
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<dc:date>2009-11-04T00:13:09+09:00</dc:date>
<dc:creator>瀧澤すいれん</dc:creator>
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<title>Ⅰ：無垢と修羅 29（終) 『終焉と濫觴』</title>
<description> あのマイロンを襲った騒動から、ひと月が経とうとしていました。街は以前のようにのどかな日常を取り戻し、これまでとあまり変わりのない毎日が続いているようにも見えます。あれほどの怪奇な事件が起こったにもかかわらず、ここマイロン市がこのような平常を保てたのも、ひとえに市長であるリンデ氏のおかげでありました。市長はかつて、ダドックの法学校在学中に高等文官試験に合格し、卒業後は司法官補佐としてマイロン裁判所詰
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<![CDATA[ あのマイロンを襲った騒動から、ひと月が経とうとしていました。<br />街は以前のようにのどかな日常を取り戻し、これまでとあまり変わりのない毎日が続いているようにも見えます。<br /><br />あれほどの怪奇な事件が起こったにもかかわらず、ここマイロン市がこのような平常を保てたのも、ひとえに市長であるリンデ氏のおかげでありました。<br />市長はかつて、ダドックの法学校在学中に高等文官試験に合格し、卒業後は司法官補佐としてマイロン裁判所詰めとなりました。<br />それから二十余年、市長は明晰な頭脳と冷静な判断を持ってマイロン裁判所へ勤め、マイロンの誇る名判事として名が通り、四十歳の時に請われてマイロン市長へと推薦就任したのでありました。<br /><br />市長はかねてより敬虔なライラ教徒でありましたが、その怜悧な頭脳は所謂“奇跡”のような曖昧模糊なものは認めず、常に冷静に物事を見つめ、心静かに公平な判断を下しました。<br />そんな彼の対応は、かの“得知れぬ生物”タルマを目にした時も、揺るぎはしませんでした。<br /><br />そんな彼には、ある持論がありました。<br />それは“人間とは知能である”というものです。<br />金や権力、優れた容姿や煌びやかな衣装など、いずれもその人を彩る要素ではありますが、どれもいずれは人に奪われたり失うものであります。<br />しかし、“知識”は違います。<br />その人がそれまでの人生において溜め込み、成熟させた知識や知恵は、誰にも奪われることも失うこともない、その人のみのもので、これこそがその人間の世界、本質であると市長は考えていました。<br /><br />しかしその強固な市長の思想を、軽く打ち砕く者が現れました。<br />かの翠の瞳と髪を持つ妖少女、“キリス”です。<br />彼女の能力“支配（コントロール）”を受けた市長は、意識の薄れる中、それまでの長い人生で蓄積してきた彼の知識と知恵を、まるで一切合切浚われたような感覚に襲われたのでした。<br /><br />これまで“決して他人に侵されることのないその人間の形作る自己の領域”だと考えていた頭脳を、まるで湖底の泥を掬うかのように、いとも簡単に浚われてしまった事実に、事件の翌日に目を覚ました市長は驚愕したのでした。<br />市長は初めて、人知を超えた奇跡の存在を信じました。<br /><br />それから数日後、首都ダドックからルードン大博士の使いが三名、マイロンを訪れました。<br />いずれも巨船来襲の報告を受け、視察に来たルドニア研究所の職員です。<br />まず市長は、マイロン市の沖合いに現れたのは、頭に獣の角を持った一角のみだと虚偽の報告をしました。<br />その一角どもを引き連れていた妖少女・キリスのことも、その数日前の銀漢際の夜に現れた謎の少女・ホポワのことも、一切口にはしなかったのでした。<br /><br />「我が市が誇る優秀で勇敢なマイロン兵の働きにより、一角を持つ異形の者ども十二名を残らず殲滅。その者らが乗っていた巨大な船も、火を放ち沖へと沈めました」<br /><br />そしてそのダドックからの使者には、殺害した十二人の一角の遺体をすべて引き渡したのでした。<br />（ただし、その遺体すべてから“角”は消え去っていましたが）<br /><br />市長はマイロンの人々にきつく、決して本当の事は他言しないようにとおふれを出しました。<br />そのことが外に漏れてしまえば、きっとマイロンにとても良くないことが起きると市民らも重々承知していたので、皆はこの信頼すべき清廉な市長に従ったのでした。<br /><br /><br />それからホポワといえば、マゼルとミゼルの家の程近くにある深い森の中にある古い家をあてがわれ、角を失った唯一の生き残りの一角、“バブロ”とともにそこに暮らしていました。<br /><br />キリスはあの一件以来、姿を見せることはありませんでしたが、彼女が現れるとすればその目的はホポワです。<br />なので、ホポワを街のはずれの中に置くことは、決して悪いことではないのでした。<br />そしてバブロは、自らの傷を治してくれたホポワに神秘性を感じ、キリスの代わりに彼女に遣えるような形になったのでした。<br /><br />ホポワはバブロとともに、山菜や森の果物を採ったり、ささやかな畑をこしらえたりして暮らすこととなりました。<br />勿論、二人のそんな暮らしでお腹いっぱいにはなりませんでしたが、街にはゼット爺さんを始めとする、ホポワに以前に傷を治して貰った人々が沢山いて、彼らは今でもやれ魚だ肉だ野菜だと施しをくれるので、二人はそれをありがたく頂戴し、日々の糧としていたのでした。<br /><br />さて、マゼルとミゼルのお家はお父さんが死んでからというもの、以前より増して生活は苦しくなりました。<br />お母さんも朝早くから市場へ出かけて働くようになり、マゼルとミゼルは件のけんかにより、少しぎこちの悪いまま、なんだかチグハグな生活を送っていたのでした。<br /><br />マゼルは当初、父の仇、憎きキリスの傷を治した上に逃がしてしまったホポワを激しく責め立てました。<br />しかし、ミゼルの「あのキリスだって、きっとホポワの家族なんだよ」という言葉に心を動かされ、ついには何も言わなくなり、今ではよくホポワの森の棲家へと遊びに出かけるほどになっていたのでした。<br />はじめはそこにいるバブロに強い嫌悪感を抱いておたマゼルでしたが、彼の素朴で純粋な本当の心を知るに連れ、次第に心を許しました。<br />そして今では、マゼルとバブロは、本当に仲の良い友達のようになり、こう思うようにもなったのでした。<br /><br />「こんな良い奴を無理やりに操っていたキリスは、やはり許せない奴なんだ！」<br /><br />　　　×　　　×　　　×<br /><br />とある天気の良い昼下がり、家の軒先でホポワは古い木製の揺り椅子に座り、ぼんやりと考え事をしていました。<br />家の前のわずかな陽の差す場所にこさえた畠には、今だ慣れない野良作業に体の大きなバブロが鍬を持ち四苦八苦しているのでした。<br />ホポワが思うのは、教会の四階からキリスを逃した後、マゼルに投げかけられた言葉でした。<br /><br />「何でキリスの傷を治したんだ！！あいつの腕を奪ったという、自分の罪から逃れたかっただけじゃないのか！？」<br /><br />確かにそうかもしれない、とホポワは思いました。<br />キリスの腕を奪ったという罪を拭い去りたかった、それを優先しただけなのかもしれません。<br />しかし、しかしです。<br />ホポワは最近、よくよく考えるようになりました。<br />マゼルにはたいへんに気の毒ですが、キリス一派が殺したのは、マゼルのお父さんとその漁師仲間の二人だけです。<br />それ以外に人は誰も殺されていません。<br />そしてその報復として、キリスは（能力で従わせていたとはいえ）十二人もの手下の一角を殺されたのです。<br /><br />二人と十二人。<br />これでもう仕返しは十分なのでないかと、ホポワは思いました。<br />そしてこれ以上、キリスをも殺す必要があるのでしょうか？<br />しかも彼女は、自らが手を下して殺しを行ったわけではありません。<br />原因は、力を持て余してしまった一角の誰かにあるはずなのです。<br /><br />自分の判断は間違えてはいない、キリスまで殺すことはなかったのだと、ホポワはそう思い込むようにしていました。<br />ホポワはひとりで納得すると、軽く鼻歌を歌いました。<br />それはどこで覚えたのか、誰に教わったのかもわからない旋律でした。<br />ふと思い立って、ホポワはバブロにさりげなく声をかけました。<br /><br />「ねぇ、バブロ」<br />「なんだ、ホポワ」<br /><br />バブロは土から顔を上げ、大きく天を仰いで額の汗を首にかけたリネンで拭ってから、答えました。<br /><br />「あなた、ふるさとの島に帰りたくはないの？」<br />「……」<br /><br />バブロは俄かに真顔になり、黙りました。<br /><br />「もちろん、あんな大きな船で何十日も航海してきたのだから、すぐに帰ることができないのはわかってる。けど、いつかは生まれた島に戻って、家族やお友達なんかと会いたいんじゃないの？みんな、あなたの帰りを待っているのではないの？」<br /><br />するとバブロは首をすくめ、小さくいやいやと首を振り、少し寂しげな表情をして言いました。<br /><br />「俺の村、もうない」<br />「え？」<br />「俺の村、俺たちがキリスに従って島を出る晩、みんな殺して焼き尽くした。この、俺たちの手で」<br /><br />そう言って、バブロは自分の右手をじっと眺めました。<br />ホポワはバブロが何を言っているのか一瞬では理解できず、しかし、直感で何か悲痛なものを感じて絶句しました。<br /><br />「出発の前の晩、“角”を通じてキリスが俺たちに命じたのだ。村の人間を、女も子供も区別なく全員殺して、火を放てと。キリスは、ここに自分のいた形跡を残したくなくて、村全体を消して口封じをしたのだ。もちろん俺たちはその狂気に心の中で必死に抗ったが、角の支配の力には適わなかった。俺たちはみんなが寝静まった夜に不本意に決起し、村民をひとり残らず殺した。そしてなきながら火を着けた。俺の故郷に人は沢山いた。でも、もうひとりも残っていない。俺の親も、妻も……二人の子供もだ」<br /><br />そこまで聞くと、ホポワは口をその可憐で小さな手で抑え、むせぶように泣きました。<br />バブロはその様子を目にすると、ホポワのそんな姿を見たくはないとばかりに目を背け、また小さな（彼にとって小さく見える）鍬を不器用に畠に差し込むのでした。<br />ホポワは思いました。<br /><br />『ああ、私はこの人の本当の幸せの為になるら、どんなことでもして、何でもあげてしましたい。しかし一体、この人の本当に欲しいものは何なのだろう……』<br /><br />そしてまた、美しい水晶のような涙が、ホポワの滑らかな頬を伝って落ちたのでした。<br /><br /><br />【Ⅰ：無垢と修羅】終わり。<br />【Ⅱ：白金のスプーン】に続く。<br /><br /><br /><FONT color="red">↓ランキングに参加しています。宜しければクリックをお願いします</FONT><br /><a href="http://novel.blogmura.com/novel_highfantasy/" target="_blank"><img src="http://novel.blogmura.com/img/novel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=290988" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-21.fc2.com/m/a/w/mawapizza/a_01.gif" style="border:0px;" alt="FC2 自作小説ランキングへ" ></a> ]]>
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<dc:subject>Ⅰ：無垢と修羅</dc:subject>
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<dc:creator>瀧澤すいれん</dc:creator>
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<title>Ⅰ：無垢と修羅 28 『決着』</title>
<description> 『しめた！』鉄の香りのする血を噛み締めながら、マゼルは心の中でそう歓喜しました。マゼルの狙いは、最初からホポワの能力を使用することでした。いくら何でも、あの数多のマイロン兵達をかいくぐって巨船から陸まで渡りきり、四階建ての建物の窓まで一飛びするような怪物に、まともに闘ってかなうはずもないのです。“怪物には怪物を”マゼルはキリスを倒すには、ホポワの能力“破壊と再生（ルドラ）”をぶつけるほかないと考えたの
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<![CDATA[ 『しめた！』<br /><br />鉄の香りのする血を噛み締めながら、マゼルは心の中でそう歓喜しました。<br />マゼルの狙いは、最初からホポワの能力を使用することでした。<br />いくら何でも、あの数多のマイロン兵達をかいくぐって巨船から陸まで渡りきり、四階建ての建物の窓まで一飛びするような怪物に、まともに闘ってかなうはずもないのです。<br /><br />“怪物には怪物を”<br /><br />マゼルはキリスを倒すには、ホポワの能力“破壊と再生（ルドラ）”をぶつけるほかないと考えたのでした。<br />そのホポワが最初にキリスに狙われたことはさすがに焦りを覚えましたが、その時、マゼルは見ていたのです。<br />失神して倒れ込んだホポワの右手の光が失われず、その後も豊かな光を蓄えて続けていくのを。<br />そしてそれに、キリスは気付いていませんでした。<br /><br />これは、この輝きが最高潮にまで達した時にホポワを起こせば、その力をすぐさま使用できるに違いありません。<br />それまでマゼルは、キリスにその算段に気付かれないよう、時間を稼がなくてはいけないのです。<br /><br />『父の復讐を果たしたい！』<br /><br />その執念の一心でマゼルは、キリスの鞭のような攻撃に耐え続けました。<br />そして、ホポワの右手の光が最高に満たされた時、ホポワを強引にでも起こすべく、マゼルはあたかもキリスに向けて投げるような振りをして、ホポワに物をぶつけたのでした。<br /><br />一投目は惜しくもはずれました。<br />続く二投目、その時投げたインク瓶は寝ているホポワの頭部にうまく当り、ホポワはその衝撃で目を覚ましました。<br />そして、マゼルの方を向いているキリスの背後にて、ムクリと起き上がり、キリスを見据えたのでした。<br /><br />『おのれ、ぬかった！最初から目的はこれか！』<br /><br />キリスはホポワの右手の朝陽のような輝きを見て驚愕しました。<br />すでに“破壊と再生（ルドラ）”の射程圏内に含まれている自分は、いつその力を食らってもおかしくありません。<br />右手の輝きの強さを見るに、今それをまともに食らえば、自分の体は木っ端のように砕け散るに違いないのでした。<br /><br />『逃げるか！？挑むか！？』<br /><br />咄嗟にキリスの脳裏に浮かんだのは、その二つの選択肢でした。<br />しかし逃げるにしても、現在の位置関係ではこの部屋の扉も窓も、ホポワの脇を通らなくては行くことはできないようになっています。<br />（これもマゼルの狙い通りです）<br />ならばここは猛然とホポワに立ち向かい、全身を吹き飛ばされる前になんとかホポワにまで辿りつき、すぐに殺してしまうより他はありません。<br />キリスはそう決心しました。<br /><br />「だぁぁぁ！！」<br /><br />覚悟を決めたキリスが本気の力を出し、ホポワへと突進します。<br />その姿は、まるで雷の力を帯びた獣のようです。<br /><br />「来た！！」<br />「ホポワ、力を放て！！」<br /><br />ゼイラとマゼルが、ほぼ同時に叫びました。<br />ホポワの目はまっすぐにキリスを見据え、右の手のひらをホポワに向け掲げました。<br /><br />カァッ！！<br /><br />ホポワの力が、いっそう強く輝きます。<br />朝の眩い陽の光を直視したように、キリスの目の奥がズキンと傷みました。<br /><br />『……ああ、駄目だ。間に合わなかった。奴の力を、まともに受けてしまう』<br /><br />刹那、キリスはそう思いました。<br />よくよく考えてみれば、キリスはすでに“破壊と再生（ルドラ）”の領域内にいて、はなから間に合うはずもないのです。<br />（しかしそしてそうなると分かっていても、他に手はなかったのですが）<br /><br />『……なんてことだ、七つの“胚（エンブリヨ）”を全て集めるのは、この私の他ないと思っていたのに。まさか一つも集めることなく、ここで脱落とは……』<br /><br />そしてあとは、ホポワの能力により己の体が砕け散るのを待つだけです。<br />その時、キリスは自身のある違和感に気づきました。<br />いや、違和感というよりは、実にさっぱりとした爽快感でしょうか。<br />キリスは思わず足を止め、その場に踏みとどまりました。<br />そして自らの右手を、まじまじと眺めたのでした。<br /><br />『え？……ある。右手が、ある』<br /><br />なんと、キリスの千切れ飛んだはずの右腕が、傷一つない艶やかな少女の腕として、元の通りに戻っているのでした。<br />もう痛みも何も、霧のようにさっぱりとなくなっています。<br />そのあまりの出来事に、もはや決着はついたと確信していたマゼルとゼイラも、思わず言葉を失いました。<br />やがてキリスは事態を理解すると、咄嗟に歓喜の色を浮かべました。<br /><br />『ホポワめ、能力をしくじった！私を破壊するつもりが、間違えて再生をしてしまったのだ！』<br /><br />そう思ったキリスは、生まれ変わったようなアイス・グリーンの澄んだ瞳をホポワに向けました。<br />するとホポワは、すでに光を失った右の手のひらの向こう側で、泣いていました。<br />ホポワは泣きじゃくった顔で、つかえつかえ言いました。<br /><br />「ごめんね、キリス。私、本当にあなたの手を、壊すつもりはなかったの。でも、あの時は自分の力のことも全然分かっていなくて、咄嗟にあんなことになってしまったの。本当にごめんね、キリス。とても痛かったよね。でも、元の通りに戻したから、どうか、どうか、怒らないで、私を許してね……」<br /><br />『何を言っているのだ、こいつは！？』<br /><br />キリスは思わず面食らいました。<br />しくじったのではありません、マゼルは故意にキリスの手を治したのです。<br /><br />『何の為に！？何の利益があって！？』<br /><br />キリスの頭脳は一瞬混乱したあと、すぐさま次の指令を下しました。<br /><br />『とりあえず、今のうちにホポワを殺せ！』<br /><br />そうしてキリスが再び身構えた瞬間、部屋の木戸が勢いよく蹴り割られ、外の廊下から武装したマイロンの兵士らがどっと入ってきました。<br /><br />「いたぞ、放て！」<br /><br />キリスを見とめたその隊の兵隊長がそう号令がかけると、弓と矢を持った兵士が一歩前え出て素早く構え、キリスに向けて放ちました。<br />矢はキリスの顔のすぐ横を霞め、背後の石壁へと当り、パッと綺麗な火花を散らしました。<br /><br />『くそ、この数をここで相手するのは難儀だ。出直すか』<br /><br />そしてキリスは泣きじゃくるホポワを押しのけて、ここへ入ってきた窓に向かって猛然と進むと、そこからピョンと飛び降り、どこかへと消えてしまいました。<br />その間は極わずか、皆はあっけに取られました。<br /><br />「おのれ、逃げおったか！」<br /><br />ややあって兵隊長は窓まで行くと、そこから外を眺めそう叫びました。<br />しかし、この闇の中では、あのすばしこい少女は見つかるはずもありません。<br />兵隊長は諦めを表す、軽い舌打ちをしました。<br />すると兵士の一人がマゼルの重傷に気付き近づいてきました。<br /><br />「君、大丈夫か？」<br />「……え、ええ」<br />「何だ、こりゃひどい」<br />「あの少女にやられたのか？」<br /><br />わらわらと集まる兵士達への返事もそぞろに、マゼルはまるで感覚のない口元を押さえながら、ホポワの方を見ました。<br />ホポワは疲れた様子でその場にくたりと座りこんでいます。<br />そしてその泣き痕のある横顔は、何かを思いつめたようでもあり、しかし、どこか晴れ晴れしさを微かに感じさせるのでした。<br />マゼルは、心の中で絶叫しました。<br /><br />「何だ、一体何のつもりなんだ……ホポワ！」<br /><br /><br />【つづく】<br /><br /><FONT color="red">↓ランキングに参加しています。宜しければクリックをお願いします</FONT><br /><a href="http://novel.blogmura.com/novel_highfantasy/" target="_blank"><img src="http://novel.blogmura.com/img/novel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=290988" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-21.fc2.com/m/a/w/mawapizza/a_01.gif" style="border:0px;" alt="FC2 自作小説ランキングへ" ></a> ]]>
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<dc:subject>Ⅰ：無垢と修羅</dc:subject>
<dc:date>2009-10-13T00:04:50+09:00</dc:date>
<dc:creator>瀧澤すいれん</dc:creator>
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<title>Ⅰ：無垢と修羅 27 『マゼルの企て』</title>
<description> まるで鞭のようにしなやかで慈悲のないキリスの打撃が、体を丸め、頭を抱えて身を守るマゼルに執拗に襲いかかりました。ビシッ！バシッ！ビシッ！それをマゼルは、ただただ歯を食いしばって堪えています。そして時折、その鞭は槍となって、今度はマゼルの顔や脇腹のあたりを目がけ刺すように突いてくるのでした。ドスッ！ドスッ！「グフッ！」顔を伏せていて表情は見えないものの、悶絶の声がマゼルから漏れました。いくら頑なに身
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<![CDATA[ まるで鞭のようにしなやかで慈悲のないキリスの打撃が、体を丸め、頭を抱えて身を守るマゼルに執拗に襲いかかりました。<br /><br />ビシッ！バシッ！ビシッ！<br /><br />それをマゼルは、ただただ歯を食いしばって堪えています。<br />そして時折、その鞭は槍となって、今度はマゼルの顔や脇腹のあたりを目がけ刺すように突いてくるのでした。<br /><br />ドスッ！ドスッ！<br /><br />「グフッ！」<br /><br />顔を伏せていて表情は見えないものの、悶絶の声がマゼルから漏れました。<br />いくら頑なに身を守っているといっても、そこは鎧などを纏っていない生身の体です。<br />次第に少年の皮膚は裂けたり、熟れたイチジクの実のようにどどめ色に腫れ上がり、至るところで緋い血を流していました。<br />それでも憎しみの権化、キリスの攻撃の手は休まりません。<br /><br />ビシッ！ドカッ！バキッ！ドスッ！<br /><br />ついにはマゼルの血しぶきが、石の床や壁に飛び散りました。<br />それはまるで、夜空に浮かぶ天球に張り付く、数多の星々のようです。<br /><br />この惨劇を目の当たりにし、ゼイラは涙を流しながらその場に立ち尽くしていました。<br />今ここで、自分より力の小さなマゼルが、人外の能力を持つ化物の少女に一方的に攻撃されている。<br />しかし、今の自分にはどうすることもできない。<br />無闇に突っ込みでもしたら、一撃で仕留められることは火を見るより明らか。<br />むざむざ殺されるようなものだ……。<br /><br />『マゼル！マゼル！』<br /><br />なまじ闘いの腕があるばかりに相手との力量の違いを察知し、ゼイラは何もすることができず、ただただ心の中で叫び、涙を流すのでした。<br /><br />「さて、その顔を上げぬか」<br /><br />不意にキリスが攻撃の手を休め、マゼルに語りかけました。<br />常に顔を伏せているマゼルの、苦痛と恐怖にゆがむ顔を見てみたくなったのです。<br /><br />「さあ、顔を見せよ！」<br /><br />キリスの呼びかけにマゼルはピクリと反応し、そちらに目を向けました。<br />するとどうしたことでしょう、血にまみれた顔から覗くその瞳に絶望の色はなく、まだ熱を持った若々しい狼のような目を保ったままなのでした。<br /><br />「な！？」<br /><br />予想外の事に、キリスは思わず絶句しました。<br />なぜ、なぜ、この餓鬼は今だこのような力を持った目を？<br />頼みの綱の能力者、ホポワは失神して当分は目覚めません。<br />もう一人の少年は何もできずに立ちすくむ、ただのデクノボー。<br />剣はマゼルの手の届かないところに、ポツリと落ちています。<br />一体、この絶望的な状況の最中、何に希望を託しているのでしょう。<br />キリスはその不可解なマゼルの表情に、何やら不安を覚えました。<br /><br />「おのれ、このコワッパが！」<br /><br />そしてマゼルの栗色の髪の毛を左手でグイと掴むと、それを思い切りひっぱり上げ、対面の壁の方へ軽々と投げ飛ばしたのでした。<br /><br />ガシャーン！！<br /><br />マゼルはその逆の壁の方に置いてあった木製の机の上に、逆さまになって落ちました。<br />その勢いで頑丈そうな天板はバキリと割れ、机上の蝋燭台やインク瓶やペン立てなどがばらばらと辺りに散乱しました。<br /><br />「う、うぐっ」<br /><br />マゼルが頭を振り、その衝撃から気を取り戻した刹那、すでにキリスはマゼルの目前にまで迫り、また容赦のない攻撃がビュンビュンと飛んできたのでした。<br />マゼルはまたすぐに身を丸め、防御の姿勢へと移りました。<br /><br />バシッ、ビシッ、ドカッ、バキッ！<br /><br />『そうだ、そうなのだ』<br /><br />マゼルへ冷酷な手打ちを繰り返しながら、キリスは思いました。<br /><br />『こやつはこうして、頑なに身を守る以外に術はないのだ。だのになぜ、まだ光を湛えた瞳をしておる？ただ単に頭を強く打って気でもふれたか、もしくは密かに――』<br /><br />「……ふ、ふふ」<br /><br />不意に、攻撃を受けてうつむくマゼルから、不気味な笑い声が漏れました。<br /><br />『！？』<br /><br />キリスはその異様さにおののき、攻撃の手を休めました。<br /><br />「……ここだ」<br /><br />そう確信したようにボソリと呟くと、マゼルは顔を上げてキッと鋭い目つきでキリスを真っ直ぐに見据えました。<br /><br />『やはり、こやつは何かたくらんでいる！』<br /><br />キリスはマゼルの表情からそう確信し、即座に警戒をしました。<br />すると、マゼルは手元に落ちていた木製のペン立てを拾い上げ、床に座ったそのままの体勢で、それをキリスの方に向けて思い切り投げつけました。<br /><br />「な？」<br /><br />キリスはそれを簡単にヒョイと避けると、ペン立てはコン、コン、と後方の石床に落ちて跳ねました。<br />キリスは正面を向いたまま、思わずあっけに取られてしまいました。<br /><br />『……何だ、これは』<br /><br />マゼルはもう一度、こんどは小さなインク瓶を手にすると、またキリスの方に目掛け、強く投げつけました。<br /><br />「えい！」<br /><br />しかしこれもキリスには当らず、そのままキリスを過ぎて後へと落ちました。<br />コン、ゴツ。<br /><br />このマゼルの幼稚な攻撃に、キリスはまったく呆れるとともに、沸々と怒りが込み上げてきました。<br /><br />「おい。貴様の反撃とは、その程度か？、それで私を仕留められるとでも、本気で思うているのか？……私も見くびられたものだ。少しでも貴様に警戒したのが、まるで莫迦のようだ」<br /><br />そして少しだけ哀しそうな顔をしたと思うと、すぐさま鬼のように恐ろしく冷酷な表情となり、腰を下ろしたままのマゼルを見下ろして言い放ちました。<br /><br />「いたぶるのは終わりだ！殺す、殺してやる！まずは私と同じく、右腕を切断するのだ！さあ――」<br /><br />そう気炎を吐いた瞬間、キリスの脳裏にある違和感がぽかりと浮かび上がりました。<br /><br />『“ゴツ”？今、インク瓶が“ゴツ”と音を立てたような……』<br /><br />先ほどの、インク瓶が床で跳ねた音を思いかえし、キリスはくるりと後ろを振り返りました。<br />するとそこには、気を失って倒れていたはずのホポワが、ゆらりと百合の華のように首をもたげて立っていました。<br />そして……その右腕が、神々しく、まるではちきれんばかりの眩い光を湛えていたのでした。<br /><br />「え！？」<br /><br />その二人の距離は、ごくわずか。<br />ホポワの能力“破壊と再生（ルドラ）”の影響の及ぶ圏内に、すでにキリスは含まれていたのでした。<br /><br />『し、しまった！』<br /><br />驚愕するキリスの後ろで、血まみれのマゼルの顔がニヤリと歪みました。<br /><br />【つづく】<br /><br /><FONT color="red">↓ランキングに参加しています。宜しければクリックをお願いします</FONT><br /><a href="http://novel.blogmura.com/novel_highfantasy/" target="_blank"><img src="http://novel.blogmura.com/img/novel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=290988" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-21.fc2.com/m/a/w/mawapizza/a_01.gif" style="border:0px;" alt="FC2 自作小説ランキングへ" ></a> ]]>
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<dc:subject>Ⅰ：無垢と修羅</dc:subject>
<dc:date>2009-09-28T00:26:37+09:00</dc:date>
<dc:creator>瀧澤すいれん</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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<title>Ⅰ：無垢と修羅 26 『キリスの攻撃』</title>
<description> 「……貴様、本気でそんなことを考えているのか？いくら私が手負いとはいえ、お前のような餓鬼に不覚を取るほど憔悴してはいないぞ」キリスは冷ややかな鋭い目で、マゼルを刺すように眺め言いました。マゼルのこの不遜な言動に、キリスは激しい屈辱を感じたのでした。貴様などに何ができる？と。一方、新たに情熱の焔を燈したマゼルの瞳は、その冷淡な視線をまるで溶かす太陽のように迎え打ちました。「勿論、本気さ」そう口にすると
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<![CDATA[ 「……貴様、本気でそんなことを考えているのか？いくら私が手負いとはいえ、お前のような餓鬼に不覚を取るほど憔悴してはいないぞ」<br /><br />キリスは冷ややかな鋭い目で、マゼルを刺すように眺め言いました。<br />マゼルのこの不遜な言動に、キリスは激しい屈辱を感じたのでした。<br />貴様などに何ができる？と。<br /><br />一方、新たに情熱の焔を燈したマゼルの瞳は、その冷淡な視線をまるで溶かす太陽のように迎え打ちました。<br /><br />「勿論、本気さ」<br /><br />そう口にすると、マゼルは腰に下げた短剣の柄を握り、すうっと革の鞘から引き抜きました。<br />短剣とはいえ、マイロン兵の中でもいちにを争う優秀な兵士の所有する武具です。<br />その鋭い切っ先は、まるでギラリと艶かしく光ました。<br /><br />『抜いてしまった･･････』<br /><br />その様子を無言で眺めていたゼイラは、絶望したように思いました。<br />剣とは、相手を殺傷する為だけにある、美しくも残酷な武器です。<br />それを抜いて相手に向けるということは、相手を殺すという己の意志の現れであるのと同時に、逆に己が相手に殺されても文句は言えない、それだけの覚悟はしているということなのです。<br />それほどの意志を持って剣を握らねばならないと、ゼイラはお父さんから常々そう言われていたのでした。<br /><br />つまり、丸腰のキリス相手にマゼルが剣を抜いてしまった以上、マゼルがいかにキリスに打ちのめされて残虐な殺され方をしたとしても、それはマゼルが先に仕掛けたことであり、誰もキリスをとがめることはできないのでした。<br />この戦いは正しく、マゼルが始めたのです。<br /><br />「ほほう」<br /><br />キリスは、全く逃げるそぶりも見せずに、自分に向かって剣を構える少年の姿を正視しました。<br />それは誰から見ても、まるでおぼつかない素人の構えだということが見てとれました。<br />事実、マゼルはこれまで剣を握ったことは（子供同士の遊び以外では）全くなかったのです。<br />キリスはマゼルの必死の姿勢を鼻で笑い、そして口を開きました。<br /><br />「よし、貴様の心意気はよく分かった。私が相手をしてやろう。しかしその前にーー」<br /><br />そこまで言うと、キリスはマゼルの目前から忽然と消えました。<br />いや、消えたのではありません、キリスは目にも止まらぬ早さでその場で高く飛び上がり、部屋の上の天井を蹴って、マゼルの真後ろに立つホポワの目前へストンと降り立ったのです。<br /><br />「！キリーー」<br /><br />いきなり目の前に現れたキリスに対し驚きの声をあげる間もなく、キリスの一本しかない左の腕が、ホポワの白くか細い喉元を鋭く捕らえました。<br /><br />「かはっ！」<br /><br />ホポワの柔らかな顔が、一瞬にして激しい苦悶の色に覆われました。<br /><br />「ホポワ！」<br />「ホポワ！」<br /><br />やや遅れてそのことに気づいたマゼルとゼイラが、ほぼ同時に叫びました。<br /><br />「先ず貴様に眠ってもらわねばな、ホポワ！」<br />「あ……ああ……あ」<br /><br />キリスは鬼の形相でホポワの首を締め上げ、ホポワはその大きな両の目に涙を湛えながら、激しくあらがうように悶えました。<br /><br />そしてその時です、ホポワの右の掌がまるでお日様のように、強く暖かな力を持って輝きはじめました。<br />かの殊能力、“破壊と再生（ルドラ）”を発動させたのです。<br />ホポワは苦悶の表情を浮かべながらも、その面前で首を締めあげているキリスをギッと見据えました。<br /><br />『よしいいぞ、そのままキリスを砕いてしまえ！』<br /><br />ゼイラが心の中でそう叫んだ刹那、キリスが言いました。<br /><br />「遅い」<br /><br />そしてさらにキリスが左手に力を込めると、ホポワのつぶらな瞳はグルンと鳥が空に弧を描くように天を向き、その場にガクリと脱力してへたりこんだのでした。<br /><br />「……“破壊と再生（ルドラ）”。げに恐ろしい能力だが、近づかねばその力が及ばぬこと、それと炸裂するまでに時間を有するのが最大の弱点だな」<br /><br />そう呟くと、キリスはホポワの喉元に蛇のように喰らいついた手をゆっくりと離しました。<br />するとホポワはそのまま重力に従って倒れ込み、まるで死んだように動かなくなったのでした。<br /><br />「ホポワぁ！！」<br /><br />その様子を目の当たりにし、マゼルはまるで気でもふれたかのように絶叫しました。<br /><br />「貴様、お父さんに続いてホポワまでも！許さんぞ！」<br />「まぁ、落ち着け」<br /><br />怒りで髪を逆立てたマゼルに、キリスが顔だけを半分こちらに向けて静かに口を開きました。<br /><br />「殺しはしていない、気を失わせただけだ。（胚［エンブリヨ］を奪う前に、殺すわけにもいかんからな）。しかしこれで、奴の能力に気がねすることなく動くことができる……」<br /><br />そこまで言うと、キリスの翠色の瞳がギロリとこちらを向き、マゼルの熱い視線とぶつかりました。<br />その刹那、剣を持って身構えるマゼルの右頬に強烈な激痛が走り、その勢いでマゼルは左の方へと吹き飛ばされました。<br />横の壁に備え付けてある大きな書棚にマゼルは衝突し、革張りの表紙の立派な本やらレンの聖像や蝋燭台やらがバラバラガラガラと石床に転げ落ちました。<br /><br />「ガハッ！！」<br /><br />マゼルは思わず手で口元を抑えました。<br />そこからは、鉄錆の味のする生温かい液体が止めどなくドボドボとあふれ、マゼルの体を伝い床へと流れるのでした。<br />目にも止まらぬうちの出来事でしたが、マゼルは自分の身に何がおきたかすぐに理解しました。<br />キリスが恐ろしき速度でマゼルの面前にやってきて、左手でマゼルの右頬を叩いたのです。<br />ただそれだけのことなのでした。<br /><br />「く、くそう……」<br /><br />マゼルは顔の半分の感覚がまるでないまま、いそいで立ち上がろうとしました。<br />すると、いつのまにかマゼルの目の前にキリスが立ち、マゼルを冷たく光る翠色の瞳で見下ろしていたのです。<br /><br />「……」<br /><br />ゾクッと、マゼルの背筋に冷たく小さな蜥蜴が素早く這いました。<br />その刹那、バカッ！っという音がして、マゼルの目の前は真っ白になりました。<br />もう、それが手なのか足なのかわかりません。<br />兎に角、マゼルはキリスからの容赦のない攻撃を、さんざん受けることになったのでした。<br /><br />マゼルは必死に体を屈めて身を守ることだけしかできず、右手に握っていた彼の唯一の武器である短剣はすでに彼の元を離れ、どこかへと行ってしまっていました。<br /><br />【つづく】<br /><br /><FONT color="red">↓ランキングに参加しています。宜しければクリックをお願いします</FONT><br /><a href="http://novel.blogmura.com/novel_highfantasy/" target="_blank"><img src="http://novel.blogmura.com/img/novel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ" /></a><br /><a href="http://blogranking.fc2.com/in.php?id=290988" target="_blank"><img src="http://blog-imgs-21.fc2.com/m/a/w/mawapizza/a_01.gif" style="border:0px;" alt="FC2 自作小説ランキングへ" ></a> ]]>
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<dc:subject>Ⅰ：無垢と修羅</dc:subject>
<dc:date>2009-09-23T10:31:44+09:00</dc:date>
<dc:creator>瀧澤すいれん</dc:creator>
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